“Saint Benedict Chapel”
by Peter Zumthor
Sumvitg
’99. 07. 28
ザンクトガレンからの列車はまさにスイスという山間部をぬけてゆく。片道約3時間かけてスンヴィッツという駅へ。下車しても山しか見えない。
てっきりこれだけ見通しがよければ目的の建築はすぐ目にはいると思っていた。人気はなかったが、やっと現れた村人に尋ねるが何語だか判別できない。
メモを見せこのチャペルはどこだ?と聞くと、あの山の上だというジェスチャー。腹をくくって山道をのぼる。ヒッチハイクしたかったが、車は山を下るものしか来ない。雄大な景色を眺めながらの約1時間の登山。チャペルが見えた。ドアに手をかける。日帰りにもかかわらずここまできたのだ。閉まっていたら・・・との不安は無用だった。内部はこぢんまり。葉脈状の小屋組みと何本もの柱が垂直志向と求心性を演出する。ハイサイドライトは山あいから空だけを切り取る。葉や瞳と表現されるそのチャペルは柿板貼りの仕上げでその地にとけこんでいた。
長い帰りの列車の旅のなかで深夜特急6を読み終え、空想とたわむれた。そんな列車の旅が何故か苦ではなく、楽しくてしょうがないのだ。